− 雨 −



『 テニプリ 不二 周助 』

トン トン

屋根に雨粒が当たる音を聞きながら、手にある写真を見つめる。

外の天気とは正反対の青空。

淡い水色と空色が混ざり合う空に、薄い雲。

五月晴れと言っても言い様なスッキリとした晴れ空の写真に、
回りの湿気が無くなった気がした。

整頓された写真を見ながら、
コッソリと目の前に座っている人物を見つめる。

ハードカバーの本を頬杖をしながら読んでいた。

英文で書かれてる本なんて私には無理だなぁ・・・

数回瞬きをし、手に持っていた写真に視線を落とし、
雨音を聞きながら、ページが変える音が響く。

静かな空間に小さな音の中、

どうして、ココに居るんだろう?

そんな疑問が生まれ始めた。

確か、昨日いつもの木の下で、話しをしていて・・

その時、写真の話しが出て、
見せてもらう約束と図書館で会う事も決め、
その日は話しが終わった。

そして、今日。

図書館で写真を見せて貰っていると、司書の都合で早々に閉館し、
ゆっくり出来る場所が無くなり、残念そうに写真を返すと、
不二の微笑む表情と柔らかな言葉に付いて行けば、
男子テニス部部室へと入って行った。

促されるまま席に付き、蛍光灯の光りの下、返した写真が広げられた。

空の写真

深緑の写真

キラキラ光る海、
綺麗に咲き誇った花々

四季の一瞬を映した写真を眺め
空だけではない四季に感動を、
何時まで見ていても飽きが無く、1枚1枚ゆっくりと見ていく。

「気に入ってくれた?」

本に向いていた視線が気付かない内に自分へと
向けられている事に驚き、身体を揺らすが、

「はい・・・
 どれも綺麗で」

驚きを落ち着かせ、愛しそうに写真を見ながら紡ぐ言葉に

「それは良かった。
 良かったら、貰って」
 
柔らかな声が耳に入り、理解をした後、
収めたばかりの驚きが再び表れ、

「いえ、頂くわけにはいきません」

冷静に判断が出来なくなってくる脳を、
必死で文章を作り声に出す。

が、

「でも、貰って欲しいんだ」

変わらぬ音と言葉に返す言葉が見付からず、
不二の言葉に頷いてしまいそうになるが、

「じゃあ、1枚だけ頂いてもいいですか?」

ゆっくりと頷く不二を見た後、目の前にあった写真を手に取る。

灰色の雲から、
雨が落ち、街に霞のカーテンが掛かる。

そんな街並みをバックに、黄色いタンポポが写っていた。

雨は雫となって、黄色い花びらから落ち大地へと帰っていく。

「コレを頂きます」

持ち上げ、不二に見せ頷く姿を了承と思い、
折り曲げないように慎重に小説の間に挟んだ。





  『 テニプリ 橘 桔平 』

灰色の雨雲から無数の雨が落ち、霞がかかった様に
ぼやけて見える町並みを何も考えず、眺めた。

流れる時間に合わせ、表情を変える姿を見ていると、
雨の音の中に、足音が交ざる。

ゆっくりと視線を動かし、外から室内へと向ければ、
見慣れた人物が入り、

「こんにちは、橘先輩」

微笑み、挨拶をすると、

「何をしてるんだ?」

動かしていた足を止め、隣に立つ。

「空を、見てました」

変わらぬ表情で問われた言葉に返事を返し、
視線を空へと向ければ、橘も釣られる様に空を見上げ、

「当分、晴れそうにないな」

ポッリと言葉を零せば、

「そうなんですか?」

不思議そうに見上げてくる視線に、

「どこにも薄い雲が無いだろう。
それに、風が山からではなく海からだ」

今日は止む事はないだろ・・・

空気と共に零れ落ちた感情に

「早く、梅雨が明けるといいですね」

空から降ってくる雨に苦笑をしながら見上げれば、

「まぁ、夏になるまでの休息だと思えばいいんだが」

「神尾君が恨めしそうに、雨雲を睨んでました」

「そうか・・・」

溜息と同時に出た表情は苦笑

「伊武君も不機嫌そうに、空を見てました」

「アイツら・・」

呆れている音の中にも、どこか嬉しそうに弾んだ音が聞こえ、
無意識に笑みがこぼれ、

「梅雨が明けると、都大会ですね」

視界に居る雲は風に流されていく。

「あぁ」

雲よりも低く、ガラスに当たる雨の音に混ざりながら聞こえてくる
言葉に

「楽しみですね」

自分の中の感想が出る。

「その前に期末テストがあるがな」

心が飛びそうになっているのを察したのか、
釘を刺され、

「頑張ります」

握りこぶしを作り、空から近い場所にある
橘の顔を見れば、

微笑まれ

「まぁ、心配は要らないだろうがな。
 他の奴らが・・・」

何かと心配されている人物を思い浮かべ、
苦笑で返せば、校内になり響いたチャイムで別れた。




  『 テニプリ 千石 清純 』


街灯に照らされている道に細い雨が見え、
今、ドレぐらい降っているのかが解った。

買ったばかりの傘を差し、ようやく降った雨に安堵の息を出す。

梅雨に入ったというのに、まったく雨が降らず
ただ真夏の様に暑い日々

熱帯夜でイスに座っているだけで汗がジワリと出てくる。

そんな日が続けば節水を呼びかけるニュース

「2〜3日降り続けばいいんだけど・・・」

零れた言葉は雨と共に地面へと落ちる。

「確かに、2・3日なら我慢してもいいかなぁ」

闇の中で聞こえた声に、一瞬驚くものの、
街灯に照らされるオレンジ色の髪に睨み、

「遅くまで部活なんて、ご苦労様、千石君」

嫌味をたっぷり含んだ言葉をぶつけるが、
ヘラりと笑い

「エライでしょ、俺」

もっと褒めてと言わんばかりの言葉に
更に睨みを効かし、

「Business is what?」
用事はなに?

苛立つ気持ちが先走り、英語での会話を求めた。

「え・・
 な、なに?」

いきなりの英文に、驚き戸惑いを見せるキヨに

「From now on, it talks in English, and is a method of better」
今から英語で話しましよう

更に言い寄る。

「えっと・・・待って!
 いきなりはちょっと・・・」

「Why is it learning?」
 どうして?習っている言葉よ?

勝ち誇った様に微笑み、優越感にも似た感情が心に広がる。

いつもの様にはいかないんだから!

慌てる側が逆転している言に満足し、更に言葉を続ける。

「It should be able to do, if you are studying perfectly」
ちゃんと勉強してたら出来るはずよ

まさか・・・
予想した事に答えを求めるように睨みを利かせると、

「Since it was a night journey and rained,
  he thought that it was dangerous and picked up」
夜道だし雨だから危ないと思って迎えに来たんだよ

恐る恐る作られた言葉に、1瞬言葉を失い無音になる。

そういえば・・・

自分の感情ばかり優先して、
改めてキヨを見れば私服でカバン1つ持っていない姿に
恐る恐るの言葉で納得が言った。

そして、感情を優先して困らせた事に罪悪感が出てくる。

どうして・・私は・・・・・

自分を責めながら、
間違っているのでは?そんな風に自信なくオロオロしているキヨに

「やれば出来るじゃない・・」

力無く言葉を返す。

「そんな事ないよ」

全然自信ないし

苦笑いしながらの言葉に、

「It is not needed in welcoming」
迎えなんていらない

素直に慣れず、ツンと返し、止めていた足を動かし
キヨを追い抜いていく。

「いや、でも、最近ココら辺も危ないし!」

慌て、後を付いてくる音に

「Kiyo is given to worrying」
キヨの心配性

溜息と落と共に小さな言葉を落とし、
後ろから横へと着いたキヨへ

「Since he was hungry, it returns early.」
お腹が空いたから早く帰るわよ

心配され、嬉しくて赤くなる顔を隠す為、
早口で言葉を作り、同じ様に足を速めた。

チラリと見えたキヨの嬉しそうな横顔に、
隠した感情がバレている事が解り溜息を付いた。





  『 九州選抜 功刀 一 』

雨雲が空を覆い、太陽の光りを隠してしまうと世界は薄暗く、
蛍光灯の光りが世界を照らしていた。

時々、廊下を走る足音、楽しそうに笑う声に話し声。

近くに聞こえたと思うと遠くに去ってしまい、
最後は風に吹かれた雨がガラスに当たる音が残った。

カタカタとガラスが風を押す音。

キーボードを叩く音

短針が時を刻む音

様々な音が部屋を支配した。

あと、少し・・・

映し出されていく文を黙読し、
横に書かれている書類と間違いがないか確かめながら、
文章を作り上げていく。

動かしていた手を止め、座ってたイスから立ち上がり
プリンターから出てきた用紙を、再度黙読し、スペース確認を終え、
部屋から出、職員室へと足早に移動をした。

「失礼します・・」

軽く一礼をし、多くの席から用事のある先生を探し出し、
ゆっくりと近づき、挨拶後、手に持っていた紙を確認して貰い、
大きな頷きと是という言葉に、ホッと息を付いた。

再び、出入口で一例と挨拶をし、歩いて来た廊下を歩き帰って行く。

自分以外誰もいない廊下や教室を通り、
自分の足音を聞き歩いていけば、
何処からか数十人もの走る足音が耳に届いた。

頑張ってるなぁ

聞こえてきた声から顔見知りが居る事が解り、小さな笑いがもれる。

入部したばかりの部活に必死についていこうとする姿

言葉はキツイけど、きちんと教える姿

そんな二人のやり取りを見ながら、部長として部活をまとめている姿

思い浮かんだ光景に微笑み、耳をすまし声を聞き取ろうとするが、
足音と共に遠くへと消えていった。

再び無音になってしまった校内に残念に思いながら、
止めといた足を動かし教室へと歩くが、
誰もいない校舎に違和感を感じ、早足で歩き呼吸が乱れだす頃、
ようやく教室に入り、イスに腰掛けた。

ふう・・・

音の無い言葉を出し無意識に体に力の入っていたのか、
固まっていた体が解れてゆく。

力無く動かし、手に持っていた書類を机に置き、
再びパソコンに向かった。

カタカタ音を鳴らし、文字を打ち、文章を作り上げて行く中、
外では光りが無くなり、暗闇の中雨が降る音が続き、
部屋の暗さに気付かず、光る液晶を見つめ文章を打ち上げていく。

カタカタと教室に響く。

「おい」

いきなり耳に入った言葉に、驚き、
慌て振り向けば、

腕を組み、ドアに背を預けている姿が暗闇の中に見え、
一瞬警戒をするが、パソコンから漏れた光が、うっすらと声の主を照らし出す。

見慣れた迷彩の帽子が見え、固まっていた体と息を動かし

「カズ・・先輩」

人物の名を呼べば、

「何時までそげん事しとるつもりや?」

不機嫌を現す声に、首を捻る。

そんなに時間は立っていないはず・・・

言われた言葉に不思議に思い、時計に視線を向ければ、
短針が8の所を過ぎており、慌て、

「す、スミマセン!
 こんな時間になっているなんて気が付かなくて!」

言葉と同時に頭を下げ、動かしていたパソコンの電源を落とし
資料をカバンに詰めていれば、溜息が聞こえ、

「本当にスイマセンでした・・・」

再び頭を下げる。

「行くぞ」

そっけない言葉に聞こえる声の中に、
心配をしてくれている気持ちを感じ取り、申し訳なさが積もり、
1歩後ろを着いてゆく。

変わらない距離で廊下を歩き、校舎を出る頃には
隣同士で歩き、2つの傘の花を咲かせ、雨の中帰ってゆく。

変わらない毎日の下校。

明日は晴れてサッカーが出来ますように・・・

そんな祈りを雲に隠れている月へと向けた。




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